紙のタバコから電子たばこへと切り替えようとしている方にとって、電子たばこにどれほどの有害物質が含まれているのか?ということは重大な関心事ではないかと思います。
特に、たばこを吸うことによる病気の中で、最も気になるのが「がん」。
「がん」は日本人の死因としては、男女ともに1位にある病気です。
さらに、2016年の統計では、「肺がん」はがんの部位別統計で男性は1位。女性は2位にランクインするほどの病気。
喫煙者にとっては、「副流煙」による周囲の人への影響も気になります。
副流煙も含め、電子たばこは、どの程度の影響を与える可能性があるのでしょうか?
もちろん、禁煙するのが最も良い選択である、ということは承知の上で、近年急速に広まっている「電子たばこ」の有害性・発がん性について、今いちど調べてみたいと思います。
ただし、「電子たばこ」とひとことで言っても、その種類は様々。
この記事では、アイコス(iQOS)やプルームテック(PloomTECH)などの加熱式タバコの、メーカーによる有害性の違い。
そして、リキッド式電子たばこ「ベイプ」についても、どの程度の有害性があると考えられのか、現時点で分かっている情報を、なるべくまとめています。
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この記事の目次一覧
電子たばこの発がん性はどの程度?
この記事を書くために調査を進めていて、電子たばこについてネガティブな見出しが多かったことに少し驚いています。
例えば、「電子たばこ 発がん性」と検索すると、「Naver まとめ」の記事が上位に表示されたのですが、その見出しは
「発がん物質15倍…?「電子たばこ」はニコチンなしでも危険なの?」
というタイトル。
まず、「発がん物質15倍」という見出しで驚いたのですが、内容を読み進めていくと様々な疑問を感じずにはいられません。
客観的に有害なのは明らか
私は医者でも専門家でもありませんが、客観的に調べてみても、電子たばこ自体(加熱式タバコ、ベイプも同様に)有害なことは明らかです。
しかし、気になるのは「電子たばこの方が従来の紙のタバコよりも有害である」または、「同じくらい有害である」という情報がたくさん公開されていること。
果たして、これは事実なのでしょうか?
それを知るためには、まずは紙のタバコに含まれている「発がん性」のある有害物質について知っておく必要がありそうです。
紙のタバコに含まれる「発がん性物質」
たばこの発がん性物質には、様々な物があります。
タバコの有害性というと、まず「ニコチン」が有名です。しかし、ニコチンそのものには発がん性は認められていないんですね。
発がん性があると考えられているのは、タバコの煙に含まれている、別の物質です。
具体的な化学物質は
電子たばこのタバコの煙には、約 4,000種類以上の化学物質が含まれていると言われていますが、そのうち発がん性が疑われるものは、約60種類。
全てあげるとキリがありませんが、実は発がん性物質の中でも、リスク別によって3つのグループに分けられています。
これは、厚生労働省が後悔する情報提供サイト「e-ヘルスネット」にも公開されています。
グループ2: ヒトに対しておそらく発がん性がある
グループ3: ヒトに対して発がん性がある可能性がある
「がん」の原因となる物質には、「特定できているもの」と、「その可能性があるもの」に分類されているんですね。
紙のタバコに含まれる煙の中でも、「グループ1」に属する物質は、以下の10個です。
- ベンゼン
- カドミウム
- 2-アミノナフタレン
- ニッケル
- クロム
- 砒素(ヒ素)
- 4-アミノビフェニル
- NNK
- NNN
- ベンゾ(a)ピレン
この他にも、「可能性がある物質」として、ホルムアルデヒドや、アセトアルデヒド、鉛など、公害や大気汚染物質としてもよく聞く名前の物質が含まれています。
恐ろしい物質を周囲にも振りまいていた!
紙のタバコの有害物質について、「カドミウムやニッケル、ヒ素が含まれてるの?!」と、驚いたのは私だけではないと思います。
さらに無視できないのは、実は成分によっては副流煙のほうがたくさん含まれている場合があるという結果です。
副流煙の方が多く含まれている場合もある
厚生労働省 e-ヘルスネット の情報を参照すると、例えば「ヒ素」は、副流煙の方が5.41倍。カドミウムは1.47倍も多く含まれています。
自分だけではなく、周囲にも「発がん性物質」を振りまいているというのは、喫煙者にとっては目を覆いたくなるような事実です。
紙タバコの煙に含まれる発がん性物質の一覧は、Wikipediaでも紹介されていますので、興味のある方は参考にしてみてください。
電子たばこにはどれくらい含まれている?
ここまで、紙のタバコに含まれる有害な化学物質、発がん性物質を紹介してきました。
紙のタバコの場合、これらの有害な物質を、通常生活する上では考えられないくらい大量に吸い込んでいるわけです(副流煙も含めて)。
では、電子たばこではどうなのでしょう?
電子たばこに含まれる有害な物質は、電子たばこの種類やメーカーによって違いがあります。これは、主に電子タバコ本体の構造の違いに起因しています。
現在普及している「電子たばこ」と呼ばれているものを、次の3つに大まかに分類してみます。
- アイコス(iQOS)、グロー(glo)
タバコ葉を直接熱するタイプ。 - プルームテック(PloomTECH)
カートリッジで蒸気を作り出し、タバコ葉にあててニコチンと風味を抽出するタイプ。 - ベイプ
リキッドを熱し、蒸気を作り出す(ニコチンは含まれない)。※日本国内では、ニコチンの入ったベイプ リキッドは販売されていません。
結論から言うと、どの種類の電子タバコでも、客観的には有害な化学物質が紙のタバコに比べると大幅に削減されています。
その理由は、タバコの煙に含まれる有害な化学物質(タール)は、そもそも「燃焼」によって発生しているからです。
タバコの葉を高温の火で燃やすことにより「熱分解」生じます。その瞬間、タールを含む4000種類を超える有害物質を生み出されているのです。
タバコが燃焼される温度が上がれば上がるほど、有害物質が形成されます。となると「喫煙時にどれだけ燃焼温度を抑えられるか」が鍵となるわけです。
電子たばこを推奨しているわけではない
念のために断っておきたいのですが、私個人は電子たばこの喫煙を推奨してはいません。
いずれにせよ、有害な物質が含まれていることに変わりはないからです。
それに、多くの電子たばこに反対する意見で指摘されているように、現時点では長期的な疫学研究はなされておらず、後々さらに有害な影響が判明される(可能性がある)とも考えます。
しかし、その反面、「紙のタバコよりも、電子たばこの方がよっぽどマシなのでは??」という個人的な意見も持っています。
確かに、後々健康への有害な悪影響が判明される可能性は大いにあり得ますが(判明されない可能性も大いにあり得ますし)、現時点では紙のタバコと比較すると、電子たばこの方が圧倒的に有害な化学物質、発がん性が削減されているのは、客観的に見れば明らかだからです。
危惧されている「副流煙」に関しても、電子たばこの方がよっぽど少ないです。
吸わないに越したことはないが、現時点では電子たばこの方が、紙のタバコに比べればよっぽどマシということは、明らかなところでは?と思うのです。
「電子たばこは紙のタバコよりも悪い」または「同じくらい悪い」という記事を目にするたびに、純粋に不思議に思います。
世の中の紙タバコが、全て電子たばこに置き換わった方が、副流煙の問題や健康被害も軽減されると思うのですが、、これは極端な個人的意見です。
アイコス(iQOS)、グロー(glo) の有害物質
「燃焼する温度」によって生成される有害物質が変わるというのは、説明した通りです。
3つの電子たばこの種類の中で、タバコの葉に直接加熱するため、有害物質の生成が最も多くなると考えられます。
フィリップモーリス社の資料によると、アイコスを喫煙する時の温度は350度。吸引する瞬間は、その温度が350度を下回るように設計されているのだそうです(紙タバコは吸引時 約900度)。
一方、グローはタバコの葉を240度で加熱することに成功し、アイコスと比べてもタバコの燃焼温度がやや下回っています。
タバコの種類 | 喫煙時のタバコ燃焼温度 |
一般的な紙タバコ | 通常650度 吸引時は約900度 |
アイコス | 通常350度 吸引時に温度が下がる |
グロー | 240度 |
見ての通り、このシステムは従来の「タバコ葉を燃やす」方法と比較すると、よほど洗練された方法です。発がん性を含む、人体に有害な物質(タール)の生成を、ゼロでなくとも、限りなくゼロに近づけています。
アイコス(iQOS)はどの程度の有害性が削減されている?
参考となる資料は限られていますが、アイコスを販売するフィリップモーリス社が、FDA(アメリカ食品医薬品局)に提出した資料が参考になりそうです。
ロイター通信の記事を調べていると、紙のタバコと比較すると、95%近く削減されているとまで書かれています。
iQOSでは、喫煙者がさらされる一部の有害物質の量が従来のたばこと比べ大幅に削減され、かつニコチンを欲する喫煙者を満足させることが研究によって示されたとしている。「実際に削減のレベルは相当なもので、禁煙した人のレベルの95%に近い」と同社は文書で回答。
引用:ロイター通信
報道資料を読む限り、アイコスは従来の紙のタバコと比較して、90%近くの有害物質が削減されているという情報が広く浸透しているようです。
ただ、ロイター通信の記事の中でも、フィリップモーリス社の臨床試験の方法について、疑問視する見方も書かれています。
あくまでも製造メーカーの主張として、90〜95%の有害物質が削減されていると考えておくと良いと思います。そこには、あくまでも可能性として、自社に有利な報告を提出した可能性もある、と考えるのが自然です。
グロー(glo)はどの程度の有害性が削減されている?
基本的な構造はアイコスと変わらない、グロー。これもやはり、グローを販売するBAT社の公式資料を読み解いていくと、「WHOが推奨する9つの有害物質を、90%程度削減したことに成功した」と謳っています。
この新製品は、たばこを燃焼ではなく加熱することで、紙巻たばこと比較してベイパー(蒸気)中の有害性物質の含有量を約90%以下に抑えながら、たばこ風味の加熱されたベイパーを発生させます。
アイコスと似たような仕組みであることを考えると、両者が同程度の有害物質を削減したことは理解できます。
ところで、本来なら紙のタバコと比較してどの程度有害性が削減されているのか?具体的な成分ごとに詳しい数値を紹介するのが当然だと考えていましたが、海外の情報ソースを含め、正確な数値を見つけることができませんでした(私の調査能力不足かもしれません)。
少し前まで、アイコスを販売しているフィリップモーリス社の米国公式サイトで、詳しい情報が公開されていたはず、、なのですが、今ではこれらの資料が非公開となっています。
グローについても同様に、健康に関する情報について、詳細ページを「準備中」とのこと。今後、公開され次第更新していきたいと思います。
現時点では一般に公開されていないだけなのかもしれませんが、今後はメーカー以外の第3者による詳細な分析結果が公開されるはず。
発表され次第、このサイトでも紹介していきたいですね。
プルームテック(PloomTECH)の有害物質
アイコスとグローとは異なり、プルームテックはJTが有害物質(JTでは健康懸念物質と表記しています)の具体的な項目と、削減された割合も報道資料として公開しています。
その数値は、WHOが推奨する9つの物質において、紙巻きタバコと比較すると、なんと99%も削減されています。
プルーム・テックのたばこベイパーに含まれる健康懸念物質を測定したところ、WHOが含有量の低減を優先して推奨している9つの物質は、紙巻たばこの煙と比較して約99%も低減されていることが明らかになりました。
引用:JT RETHINK TOBBACO(※会員のみ閲覧可能)
この削減物質の中には、発がん性物質 グループ1(発がん性があると証明された物質)に含まれる、ベンゾピレン、NNN、NNK、ベンゼンも含まれます。
また、グループ2(ヒトに対しておそらく発がん性がある)に属する、ホルムアルデヒド、ブタジエン。さらに、グループ3(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)に属する、アセトアルデヒド、も含まれています。
詳細な数値は、JTがリリースする、プルームテックに関する情報提供に記載されています。
この資料を読む限り、ほとんどの有害物質が、「普通に生活する上で吸引する化学物質と同等のレベル」にまで削減されているということが分かります。
つまり、分かりやすく言えば、有害物質(発がん性物質)は、ほぼ全く含まれていない、、ということになります。
※あくまで、メーカーが公表した資料を元に考えると
ただ、これは熱を加えることによる有害物質の発生から考えると、納得のいく結果です。
加熱温度が低く、有害物質が発生しにくい
プルームテックに含まれる有害物質については、別の記事でも紹介していますが、そもそも加熱する温度が他の電子たばこに比べると非常に低いということがポイントになります(以下の図を参照)。
タバコの種類 | 喫煙時のタバコ燃焼温度 |
一般的な紙タバコ | 通常650度 吸引時は約900度 |
アイコス | 通常350度 吸引時に温度が下がる |
グロー | 240度 |
プルーム・テック | 30度 |
加熱式たばこの中では、含有する有害物質、副流煙、そして日本の企業が販売しているという点も含め、最もリスクの低い商品と言えるのでは?、、というのが、色々と調べた上での個人的な感想です。
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ベイプの有害性は「未知数」
このサイトは、主にベイプ製品についてのコラムを中心に紹介しています。
そのため、「ベイプが最も有害物質が低い」、、と言いたいところですが、そうとも言い切れないように思います。
安全かどうかは製品にもよる
日本国内で販売されるリキッドには、ニコチンは含まれていません。ということは、最も有害性が低いのでは?と考えてしまいそうですね。
しかし、発がん性物質の元となる成分は「熱を加える」ことによって生成されるということが分かりました。
アイコスやプルームテックなどの加熱式タバコとは異なり、国内外を問わず、製品の数もリキッドの数も無数に販売されている「ベイプ」。
ベイプ本体について考えてみても、加熱温度は様々です。そして、加熱部分の部品・素材も多種多様。
そのため、生成される有害な物質を、単純に一括りにすることは不可能です。リキッドに使われる香料も同様ですよね。
考え始めるとキリがありませんが、どのような製品を使い、どのくらいの温度で、どんなリキッドを加熱するのかによって、発生する物質はマトリックス状に広がります。
加熱して吸うかぎり、たとえ微量であっても有害な物質が発生するのは当然の原理と言わざるを得ません。
ただし、発生する有害物質の量は、紙のタバコと比較すれば(製品にもよるが)大幅に削減されていると考えられます。
ベイプを選ぶ時はリスクを考え慎重に
どのような製品を使うにしても、リスクは付き物です。
ベイプの場合、全ての製品やリキッドにおいて、加熱式タバコと同じレベルの成分分析が行われてはいません。紙のタバコほど法規制が厳しくないので当然です。
信頼性については、製造メーカーの企業努力に頼るしかなく、この点では加熱式タバコよりもリスクが高まるのではないでしょうか?
つい先日も(2018年3月8日)、国内のベイプ 販売業者が、ニコチン入りのリキッドを販売していたことが分かり、摘発されました。
製造メーカーと販売業者をどこまで信頼して良いのか、私たち消費者が十分に注意する必要がありそうです。
さいごに 電子たばこの方が「まし」だが..
ここまで、電子たばこに含まれる有害物質や発がん性物質について、現状調べられる限りの情報を調べた上で、紹介してみました。
個人的な意見ですが、加える熱が高くなることによって、有害物質が生成されるということを考えると、現状最も安心できるのは、もしかすると「プルームテック」なのではないか考えています。
「ベイプ」は、使い方や製品によって、リスクも異なるのではないでしょうか。
調べていて気が付いたのは、本当にこの分野に関しては、まだまだ研究途中ということ。情報も少なく、全体を把握するのはとても困難です。
確実に分かっていることは、化学物質をたくさん吸い続けるということは、健康にとっては良くないということくらい。
それから、紙のタバコと比べれば、電子たばこの方が喫煙者にとっても喫煙者の周囲にいる人にとっても、よっぽど「マシ」なのではないかと思います。
喫煙者としては、なるべく最新の情報を収集し続け、有害な物質が少ない製品を選ぶ努力を続けたいものです。